2011年6月20日(月) 14:00〜16:00  桂台地域ケアプラザ多目的ホール

  平成23年度ボランティアグループ分科会   6月研修会
    
    平成23年度ボランティアグループ分科会の6月研修会が、19人の皆さんが参加して開催され、保健師の小村平安子氏より被災地を訪問した体験談を交えながら、「災害時の健康管理について」、桂台地域ケアプラザ多次淳一郎氏より「夏季に向けての健康管理について」のお話がありました。
   
災害時の健康管理 〜被災地から見えてきたもの〜  保健師  小村平安子氏
      
 
 被災地の岩手県大鎚町民の健康状態把握を目的に4/23〜5/8に訪問調査を実施した。参加した保健師は162人(延べ600人)、数人でチームを作り可能な限りの訪問を試みた。その結果、訪問件数は3,728件、相談件数は4,187件に達した。

  調査目的  @安否確認により住民基本台帳を整理する
          A大鎚町民の生活や健康問題を明確にする
          B早急な対応必要者を町の保健師につなげる
          C調査結果を復興計画のための提言とする
          D将来的に保健福祉計画の策定に生かす 
                                
小村平安子氏 
 家庭訪問で明らかになったこと 
 ◆人口
   平成23年3月11日現在の住民基本台帳で16,058人の人口が、いろいろな避難先を一つ一つチェックした結果、
  確認できたのが10,758人(把握率約67%)でした。この内、死亡359人、不明745人(元から不明35人)、町内生存
  8,925人、町外生存694人でした。

 ◆ライフサイクル別健康問題
  1)乳幼児期
    乳児は見掛けなかった。水、ミルクなどが入手困難なためと思われる。幼児は、夜泣きや親から離れられないなど
    の問題があり、予防接種についての相談などがあった。緊張が解ける3か月後位からはいろいろな別の問題が
    生じるのではないか。
  2)学童期
    家族との分離、喪失体験、恐怖体験のため、夜寝られない。インスタント食品の食事で栄養の偏り、水不足で、十分
    な歯磨きができず、虫歯になるなどの問題が発生しており、心のケアが必要であるが、外部の人間にはなかなか
    心を開かない。
  3)思春期
    家族との分離、喪失体験、恐怖体験、アイデンティティの確立阻害、先の見えない不安などからか、3/11以降に
    行方不明になる人もいるようです。
  4)青年・成人期
    仕事がない、何もやることがない状況で、生活習慣病の悪化や飲酒に走ってしまう人、家族を養っていけなくなって
    責任感から、自殺する人が出るなど。
  5)高齢期
    やることがなく、刺激も少ない状況で、ただひたすら寝ているだけ。体力も気力もどんどん衰えていき、うつ病の
    発生も見られました。 
  6)発達障害のある方
    避難所になじめなく、避難所での生活は困難に見られた。そのため福祉保健施設が受け入れているが、一般の
    人も入っており大混雑していた。
    、
 ◆在宅では
  ・助かった人の家には、知人やそうでない人も受け入れたが、長期(1ヶ月以上)にわたると「あんたの所は、家も
   無事でいいよね!」などの会話が、多くなり、あつれきを生ずることが多い。
  ・生き残った人が「自分だけ生き残ってしまった」という気兼ねから負担感にさいなまれることも多い。
  ・臭いがひどく、たとえ家が残っても、住めない。家の片づけが人手不足で遅々として進まない。
  ・かかりつけの医師に診てもらいたい。(仮設の共同診療所を5月頃開設)。
  など。
 ◆避難所では
  ・リーダー的な人が出てきて、ルールつくりなどが行われる。
  ・仮設トイレはすべて和式のため使い勝手が悪い。(ひざの悪い人は使えないなど)
  ・プライバシーの問題が大きい。段ボールやカーテンで間仕切り。
  ・何もしなくても出てくる食事→自立心を失う人が出てくるのでは? 何かやることを探して動くことが大事。
  ・男性はあまり動かない、女性は、調理掃除などに活発に動き、自分たちで地域を再生したいとの意識高い。
  ・高齢者は、とにかく強い。
  ・水が十分になく、歯磨きができず、口腔衛生が悪く、病気を発生することも。
  ・病人で緊急性の高い人は、遠方の病院に移されており、避難所にいるのは、高血圧症などの持病を持った人。
  ・仮設住宅もいろいろ問題がある。騒音(隣の人のいびき)、外は砂利で、車椅子が使えないなど。
  ・いろいろ要求したいことがあっても、じっと我慢しているが、3か月過ぎた頃からどうなるかが心配。
  など。
  
 ◆防災のキーワードは、「日ごろからの連携・地域力」
  ・主軸は住民。共に生きる地域住民の支え合い、助け合い、日頃からのネットワークが大事。
  ・民生委員など、地域に中心となる人がいれば、そのエリアを任すことで、状況の把握が可能になると思う。
  ・行政、外部ボランティアには限界がある。たとえば、保健師の肩書だけでは通用しない。子供〜大人にかかわらず、
   すぐには、心を開いてもらえない。
  ・住んでいる地域で起こりうる災害は何かに基づき、対処方法を皆で考えおく事が大切。
  ・非常時備品は、3日分でと考えていたが、これでは全く不足であることがわかった。
   など。

 
   
夏季に向けての健康管理について    桂台地域ケアプラザ  多次淳一郎氏
 夏季に向けての健康管理について、@熱中症予防のポイントと A救命救急の原則(AED+  ABC)についてお話頂きました。 

◆熱中症の予防について
 ・2010年の熱中症での救急搬送状況
  7〜9月の3か月、全国で25,000件(横浜市で913件)、こども、働き盛り、高齢者の区別
  なく同じ比率で発生しており、気温が30℃以上になると顕著に増加した。

 ・2011年も
  6月1日〜14日までで、全国で613件発生。
多次淳一郎氏 

 ・予防のポイント
  (1)体力をつける(夏バテによる食事摂取量を減らさない。→香辛料を上手く活用する)
  (2)通気性の良い衣類を着る。
  (3)こまめに、少量ずつ少しの塩分を含んだ水分摂取を心掛ける。
    (ポカリスウェットなどが体液のバランスに配慮されており、望ましい)
 ・質疑応答から
  老人は暑さに鈍感、高温時には注意してあげる事が必要となる場合あり。温・湿度計を見やすい場所に置いておくことが
  効果的かも。また危ないと思える人が居たら通報が必要。

◆救命救急にAED+ABC

 ・AED(自動体外除細動器)は、自動診断してくれるので、必要な場合は、何をおいても装着し、作動させる。また普段の
  活動の中で、AEDがどこにあるかを確認しておくことが大切。
 ・AED後は、ABCを実施する。A→B→Cの順番が大切。心臓マッサージを行う際には、胸部の下に板を敷くなど、
   マッサージにより加えた圧が床へと逃げてしまわないようにする対策が必要。
    A:Airway(気道確保)、B:Breathing(人工呼吸)、C:Circlation(心臓マッサージ)