介護者教室2009
 みんなで学ぼう、介護のいろいろ
 身内の方を介護するようになったら、自分自身に介護が必要になったら、そんな時に役立つ知識や情報を得るための講座が開催されました。
いざという時の備えとして、一緒に介護のことを学んでみましょう。
日 程 表
日付 内容 講師(敬称略)
平成22年2月10日 ご存知ですか?介護保険の利用の仕方
 〜介護保険制度とその利用手順〜
・栄区高齢支援課
 ケースワーカー 鈴木英里
 保健師      谷崎志穂
・桂台地域ケアプラザ
 ケアマネジャー 八巻佳奈子
2月17日 在宅で療養しながら暮らすための支援
 〜訪問看護師・ヘルパー・ご家族・ケアマネジャーの立場〜
・栄区医師会
 訪問看護ステーション 
 所長         野原良江
・訪問介護ステーション
さくら草 サービス提供責任者
           野口佳代子
・介護を経験されたご家族
           佐藤則夫
・桂台地域ケアプラザ
 ケアマネジャー  勝呂朋子
2月24日 地域の中で助け合って暮らすとは
 〜認知症の方との関わりを通して〜
・認知症対応型通所介護
 デイ古都里・大船 長尾祐樹
 デイ古都里    藤澤  忍
・認知症の人と家族の会
             山下文子
第1回
2月10日
 介護保険制度について
・栄区高齢支援課
 ケースワーカー 鈴木英里
 保健師      谷崎志穂
 教室で学んだことの概略を以下にご紹介します。

◆介護保険について
 介護保険の加入者には、65歳以上になると介護保険者証が交付されますが、介護サービスは介護保険証を提示するだけでは受けられません。予め要介護・要支援の認定を受けてください。
 認定申請は区役所、もしくは地域包括支援センターで受けています。その際主治医の医療機関名と氏名(フルネーム)のメモ、介護保険者証、印鑑を持参してください。なお認定で求める介護度は「介護にかかる手間の度合い」であって、病状の重さを評価するものではありません。
 認定結果は通常、申請から1〜2ヵ月かかりますので、早めに申請してください。認定が出るまでの間に介護サービスが必要なら暫定の介護度で受けることができます。但し、認定結果と暫定の介護度で差があれば追徴が発生します。

◆介護保険外サービス
 横浜市では、介護保険サービスとは別に次のサービスもしています。区役所、地域包括支援センターに問い合わせてください。
●介護予防として体力向上プログラム、脳力向上プログラム、訪問指導など。
●援護の必要な高齢者の在宅生活支援として、日常生活用具の給付、住環境整備、食事サービス、紙おむつの給付、訪問理美容サービス、外出支援サービスなど。





◆訪問指導の他にも相談を受けてします
 区役所の保健師は次のような相談も受けていますので、ご連絡ください。
●40才以上65才未満の脳血管疾患等の後遺症のある方のリハビリ教室、中途障害者地域活動センターの案内
●認知症高齢者保健福祉相談
●栄区徘徊高齢者SOSネットワークの案内



◆介護サービスの利用手順ポイント ・桂台地域ケアプラザ
 ケアマネジャー 八巻佳奈子
 ケアプランはケアマネジャーが利用者や家族、サービス事業者間を調整して作成します。サービスには、ディサービス、ディケア、ショートステイ、福祉用具貸与などがあり、利用回数や日程を決めます。
 ケアプラザではいつでも車椅子、ポータブルトイレ等の貸出をしており、また介護サービスの緊急相談も受けています。
 
 信頼できる主治医を決めておくことをお勧めします。意見書作成の際に強い味方になります。また病院の相談員、看護師、先生とも介護の相談をすることができます。入院中に介護が必要となると分かったときは、退院の少し前に相談されるとよいでしょう。
 
 家族が良い介護を続けていくためには、頼れる家族環境作りや近所の方たちとの関わりを深めておくことも大切です。

 要介護度によって利用できるサービスの内容や利用限度額は変わります。但し、超過分が利用者の100%負担となりますが、利用限度額を超えてサービスを受けることもできます。

 当日の説明内容は右のパンフレットで確認できます。桂台地域ケアプラザ・地域包括支援センターで入手することができます。(Iw)
 


第2回
2月17日
在宅で療養しながら暮らすための支援
 〜訪問看護師・ヘルパー・ご家族・ケアマネジャーの立場〜    
・栄区医師会
 訪問看護ステーション所長 野原良江
・訪問介護ステーション さくら草
 サービス提供責任者     野口佳代子
・介護を経験されたご家族  佐藤則夫
 人生の最後の暮らしを自宅でご家族と一緒に在宅介護を受けたS様(85歳)の具体的な例が、S様のご長男のお話を軸に展開されました。

 
 S様はH14年に介護保険の手続きをします。自宅に手すりを取り付ける改修をし、ヘルパーとデイサービスの利用を始めます。スカラモービル、訪問理美容の利用もしました。
 H18年には夫も介護が必要となり、夫の介護保険の手続きをします。H20年2月に咳き込みがひどくなり、近くの医師に往診してもらうことになります。心不全・腎不全・肺炎のため総合病院に入院します。H20年5月に総合病院から療養型の病院に転院します。H20年8月に療養型の病院から退院して、自宅での生活が始まります。

 訪問介護ステーション、さくら草のサービス提供責任者野口氏は、「次に・・・をやりますよ!」と声をかけて介護に入ることが現場での介護のポイントと話されました。S様の場合は24時間夫が在宅していたことが、在宅介護を可能にすることができたと考えられています。訪問歯科の利用と訪問入浴の利用もありました。S様が特に「気持が良い」と好んだことは、訪問入浴でした。清拭の他に月に2回訪問入浴を組み合わせていました。

 桂台地域ケアプラザケアマネジャーの勝呂氏は、S様宅に月2回、家族のいる土曜日夕方に訪問して、家族との接触をはかる努力をしています。
 在宅介護は関係する多くのプロも含めて、家族との細やかな連携が特に大切だそうです。
 S様の場合はご家族全員がS様を大切に思っていることが、自宅介護を可能に出来たのだと、取材して感じることができました。

 
 会場のケアプラザの多目的ホールに満員の受講者が集まり、この地域の、また横浜市の、日本中のさし迫った最も大事なテーマと考えられている在宅介護の具体例の一つを知ることができました。
 最後の質問コーナーでは、時間を忘れさせる沢山の活発な質問に対して、適切な答えが講師よりありました。(S.T) 



第3回
2月24日
地域の中で助けあって暮らすとは  
〜認知症の方との関わりをとおして〜
  
・認知症対応型通所介護
 デイ古都里・大船
        長尾祐樹
       藤澤  忍 
・認知症の人と家族の会
       山下文子
 長尾さんと藤澤さんには、認知症について、山下さんには認知症のお母さんを介護された体験についてお話頂きました。

認知症について
 高齢者は年々増え、現在の160万人が2015年には250万人、2035年には337万人になると予想されている。後天的ないろいろな病気により脳の知的な働きが持続的に低下した状態が続くのが認知症であり、意欲の低下、意志判断力の低下、妄想などの症状が現れる。 認知症が進むと、食事をしたことを忘れてしまう、自分がどこにいるのかや親しい人が分からなくなる、性格が大きく変わることがある、時間の観念が分からなくなるなど、正常な日常生活が出来なくなる。
 認知症は、治る場合や一時的な症状のこともあり、また薬によって進行を遅らせることも出来るので早期診断・早期治療が大切です。専門の医療機関の受診が不可欠となります。

 認知症の介助は、その人その人により異なり、認知症の方を中心におき、ご本人の人格を尊重し、自立して充実した生活が出来るよう、本人に合わせた計画を立てることが必要です。
 認知症の方とのコミュニケーションは信頼関係を築くために非常に大切です。そのためには、聞き取ろうとする意欲や伝えようとする意欲がとても大切。話すことが無ければ、傍にいるだけでも良く、感情的、批判的な言動は特によくない。
 認知症の方の特徴として、記憶障害はあるものの、感情は非常に豊かです。記憶障害があるから嫌な思いをさせても、すぐ忘れてしまうと思うのは大きな間違いで、これが原因となって、コミュニケーションが阻害されることがあります。
 認知症の方自身に意思決定させ、自由な生活をさせることや決め付けて介助をすることを避けることが大切です。また、問題行動の裏には、原因があることが多いことにも留意する。

 認知症を予防するためには、脳を楽しく使うこと。高血圧・高脂血症・肥満対策や、運動や生活習慣対策が必要です。
 認知症ケアは、家族一人の力では、とても難しく、負担も多い。より良いケアを行うためには、一人で抱え込まないで、各福祉施設、相談窓口に相談することや地域の人たちとの繋がりも大切です。

福祉関連施設や医療機関について
 認知症専門相談先、徘徊高齢者SOSネーットワーク、介護を支える施設、介護保険サービス提供施設、認知症ケアを重視したサービス提供施設、デイ古都里・大船について、説明がありました。

認知症介護をとおして(体験談)
 アルツハイマー病を患い、認知症になった義理のお母さんを10年間介護した経験をお話されました。 

 症状が進み、問題行動が激しくなりました。病気についての理解はあるつもりでしたが、現実を受け入れることが出来ず、いい加減な介護をしていました。一人だけでの介護で、周りに自分の立場が理解されないつらい状況が続き、ウツの状態になり、胃潰瘍を発症するまでとなりました。

 介護保険が導入され、デイサービスの利用が実現し、ケアマネージャーなどの理解者ができ、やっと一人だけの介護から開放される時間をを持つことが出来るようなりました。
 介護をとおして気が付いたことは、自分の笑顔に対しては、非常に素直になってくれたこと、手が早く動くと不安をあおるようなので、手はゆっくりと動かすことなどでした。
 終末期になると、問題行動も収まり、寝たきりにちかくなって、本当に憎らしくしか思えなかった感情が無くなり、可愛くさえ思えるような心境の変化がありました。
 最終的には、卵巣癌に罹ってしまいましたが、反省点は、亡くなる直前まで、家で面倒を見た方が良いと考え入院させなかったことです。結果的に、苦痛を和らげる治療が十分できず、かえって本人を苦しめてしまいました。

 幸運だったことは、親身に世話してくれた良い医師にめぐり合えたこと、近隣の皆さんに実情をお話し、理解を得ることにより、いろいろな点で助けて頂けたことでした。

 同じ境遇の方が助けあえる場所として、全国組織の「認知症の人と家族の会」があります。気軽に相談を受けています。
  
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