平成22年度 介護者教室
   みんなで学ぼう、介護のいろいろ
 身内の方を介護するようになったら、自分自身に介護が必要になったら、そんな時に役立つ知識や情報を得るための平成22年度講座が開催されました。
いざという時の備えとして、一緒に介護のことを学んでみましょう。
日 程 表
日付 テーマ 講師(敬称略)
平成23年1月19日 ご存知ですか?介護保険の上手な活用の仕方
 〜介護保険制度とその利用手順〜
・栄区役所高齢者支援担当
 ケースワーカー 土屋義生
・介護を経験されたご家族
            西田勝年
・桂台地域ケアプラザ
 ケアマネジャー 勝呂朋子
1月26日  「介護保険外サービス」を上手に利用しよう
 〜福祉用具・配食・移動、いろいろなサービスの活用術〜
・福祉用具業者
 トーカイ横浜支店 柏谷有一
・配食サービス業者
 宅配クック1・2・3  清水 勝
           金子麻紀江
・移送サービス事業者
 らら・むーぶ・栄  瀧澤 晃     
2月 5日  家族がおこなう「はじめての成年後見」
 〜大切な家族の権利を守るために〜
・成年後見人をされたご家族
 家族の会 神奈川県支部
            小林俊一
・みはるかす司法書士事務所
 司法書士     安江 一
  第1回 1月19日  ご存知ですか?介護保険の上手な活用の仕方

〜介護保険制度とその利用手順〜

   20人の皆さんが参加し、平成22年度の介護者教室が開催されました。介護保険制度とその利用手順について、栄区役所高齢支援課高齢支援担当でケースワーカーの土屋義生氏から、また、奥様を介護された実体験を、サービス計画や利用料など具体的な内容も含め、西田勝年氏とケアマネージャーを担当された桂台地域ケアプラザの勝呂朋子氏から、お話頂きました。

介護保険制度とその利用手順
◆栄区役所の体制
 栄区役所には、各6人のケースワーカーと保健師がおり、区役所の窓口に各1人が常時対応し、他の各5人は各担当地区に出向いている。
◆介護保険の対象者
・第1号被保険者 65歳以上全員(原因を問わず、要介護認定を経て、サービスを利用できる)
・第2号被保険者 40〜65歳(16種類の国が指定した特定疾病により介護が必要となった時、要介護認定を経て、サービスを利用できる)
◆利用までの流れ
(1)要介護認定を受ける(区役所高齢支援課や地域ケアプラザに申請する)。「要支援1・2」「要介護1〜5」のいずれかに認定される。
(2)ケアプランを作成する(地域包括支援センターの保健師が利用者の目標を設定し、作成する。指定居宅介護支援事業所のケアマネージャーに委託することもできる。)
(3)サービス事業者と契約する。
◆サービスの内容
・居宅サービス(訪問介護、訪問入浴介護、通所サービスなど)
・施設サービス(特別養護老人ホーム、介護老人保健施設、介護療養型医療施設など)
・生活環境を整えるサービス(福祉用具のレンタル・購入、住宅改修など)
◆注意点
 介護保険は、申請して認定されるまでに1か月半から2か月かかるので、必要になると思われた時点で、早めに申請すること(必要と思われる時は、要介護区分が推定され、利用可能となる)。
 (以上、詳細は区役所や地域ケアプラザの担当部署にお問い合わせください)
 
土屋義生氏 
介護の実際 
 西田さんの奥さまは、生来元気で、年を取ってからも、積極的に卓球、太極拳、書道、俳句などに親しみ、人との付き合いも良く、発症したのが意外と感じられた。
 5年前頃から「普通にできていたことができなくなる」異常を感じる様になった。専門医の診断を受けた結果軽い認知症と診断され、治療を受けることになったが、その後パーキンソン病の発症も認められた。脳の活性化のため、いろいろなことにチャレンジさせたりしたが、そのうち、生活態度が消極的になり、時間や場所の感覚がなくなり、歩くことが不自由となった。
 このあたりから、体の介護、心のケアが本当に大変になってきた。3年ほど前に介護保険を申請し、要介護3の認定を受けた。21年8月には要介護4となり、ショートステイの利用が可能となった。 この頃、特別養護老人養護ホームへの入居を奥さんの承諾の下に申請した。盲腸を患い、体力の低下もあり要介護5に。現在は特別養護老人養護ホームへ入居、軽いリハビリを行っている。「介護の押し付けにならない様注意しなくていけない」これが反省点とのことです。 
 西田勝年氏
 勝呂朋子氏
       
第2回 1月26日  介護保険外の福祉サービスを上手に利用しよう
  〜福祉用具・配食・移動、いろいろなサービスの活 用術〜
 介護保険外の福祉サービス(福祉用具、配食サービス、移送サービス)について、4人の講師からお話頂きました。
  福祉用具について
(1)福祉用具とは  
 具合や体調の悪い方の助けになる道具類で、介護ベッドのような大きなものからスプーンのような小さなものまであり、介護保険外でも利用が可能です。  
(2)レンタルと販売の違い
 デザインや色などの点でバリエーションはないが、不要になったら返却ができる。レンタル期間は1ヶ月単位(1日でも1ヶ月と計算される)。
(3)福祉用具のレンタル
・介護保険内のレンタルでは、レンタルできる用具は12種類あるが、要介護認定によりレンタルできる用具が変わる。料金は1割負担で、必ずケアマネージャーを担当につけなければならない。
・介護保険外のレンタルでは、料金は10割負担(全額自費)ですが、介護認定がない方に、また、介護認定されていても、要介護認定によりレンタルが制限されたものも、レンタルできる。介護ベッドは幅が一般ベッドより小さく、本体、マットレス、サイドレールがセットの特殊寝台で、モーター付きも選べますが、車椅子は一般的な車椅子だけがレンタル対象となる。
・自費レンタルの費用(安価なものの場合)
 介護用特殊ベッドの場合:1,500〜3,000円/月程度、車椅子の場合:2,000〜5,000円/月程度
(4)福祉用具会社の選び方
 介護保険制度下の会社は、信用できると思われますが、事情の良くわかっているケアマネージャーに相談して選ぶようにすると間違いがないでしょう。 
柏谷有一氏 
  配食サービスについて
◆在宅高齢者の課題
 高齢者の独り暮らしの人が増え続け、買い物に行けない、買い物には行けるけど料理ができないなど、食事を十分に摂れず低栄養状態の方が多い深刻な状況が生じている。
◆食事サービスの役割
 低栄養の予防と安否確認(見守り)の役割を担うことができる。
◆配食サービス
・栄養バランスが取れ、消化良好で、見た目にも楽しめ、美味しいものを提供するが、定まったメニューで配食されるので、お好みで選ぶことはできない。
・弁当の種類としては、利用者の必要に応じ、常食(普通食)、塩分調整食、タンパク質調整食が用意され、刻み食やアレルギー対応食を用意している事業者もある。
◆横浜市食事サービス
 食事を届け、同時に安否の確認をする横浜市が実施するサービス。一人暮らしなどで要介護認定2以上の方の内、食事の用意が困難と認められた方が対象で、1食あたり700円以内で利用ができ、宅配クック123の食事サービスでは、横浜市食事サービスを利用すれば、1食500円前後(自費だと7〜800円程度)で利用できる。
 
清水勝氏 
 金子麻紀江氏
  移送サービスについて
らら・むーぶ・栄の移動サービス
・対象者:外出に困難や不安のある栄区近隣居住者を対象とする。
・利用の実態:病院通院と入退院が70%、施設などへの通所が20%を占める。その他はいろいろ。
◆横浜市福祉タクシーについて
 65歳未満で、身体障害者手帳または愛の手帳を取得された方が利用でき、1枚につき500円限度で月7枚が交付される。
◆横浜市ガイドボランティア制度について
 対象となる障害者に対し、社会生活上必要と認められる外出(通院、通学、通所など)に一定の範囲内で奨励金が支給される。
瀧澤晃氏
  ◆その他のサービス
 駐車禁止除外指定車、高速料金の半額割引、病院の駐車料金の割引、NHK料金の割引などが利用できる。
◆福祉クラブ生協 らら・むーぶ・栄について
・メンバー全員が出資し、運営を担う「非営利・協同」の市民事業で、ケア付きの外出サービスを実施している。
・利用するには、会員として登録する必要がある。会員でない場合でも利用は可能であるが、利用料金は会員の1.5倍となる
講座風景
第3回2月5日    家族がおこなう「はじめての成年後見」
   〜大切な家族の権利を守るために〜
 現在、奥さまの成年後見をされている小林俊一氏から実体験のお話を、司法書士として成年後見をされている安江一氏から制度の解説をして頂きました。
  家族がおこなう「はじめての成年後見」
◆後見人になったきっかけ
 日本には200万人の認知症患者がいて、うち10人中6人の割合で商品購入で詐欺被害にあっている。また料金徴収では10人中8人が不当徴収の被害にあっている。それぞれの被害額は年間2兆円、8兆円に及ぶ。奥さまが認知症を患い、同様なトラブルに巻き込まれる心配があった。「認知症と家族の会」で本制度を知り、奥さまを保護するために自ら後見人になられたそうです。
◆家裁への申立て
・当人の健康診断書等を添えて申請する。医療機関によるが、申請費用は\7,000くらい。健康診断書以外に鑑定書が必要で、かかりつけ医に依頼すると費用が安くすむそうです(およそ\50,000)。
◆自身が後見人なった理由
・月々の支払報酬を節約できる。
 特別な資産家でなければ、管理対象が少ないため親族で務まるでしょうとのご意見でした。
◆後見事務の報告で留意したこと
・金銭出納帳と通帳残高をさせる。
・年間1万円以上の支出費用の領収書を整理して保存する。
 (確定申告の医療費控除と同じ要領)
・通帳はまとめる。通帳の数が多いと集計作業が繁雑。
・重要書類(ディサービス、老人ホーム等の契約書)を整理する。
 報告の頻度は、一般家庭なら3〜4年に1回、資産家は毎年。
◆東京大学市民後見・福祉信託プロジェクト
 後見人についての相談を受けてくれます。
◆認知を発症する前の後見は
 本人が元気なうちに、任意後見人になる人(任意後見受任者)を選び、当面は任意後見人として見守ってもらう制度がある。

桂台ケアプラザからの補足
 桂台ケアプラザや民生委員は、支援の必要がありそうだとご近所の情報等から把握すると、役所と協力してその家庭を訪問し、必要に応じて後見制度を勧めるようにしています。
小林俊一氏 
  「成年後見制度」の解説
◆制度の目的
 判断能力の不十分な方々(高齢者、知的障がい者、精神障がい者等)を法的に保護する制度。本人の法律行為の代理人を選任して契約し後見人となる。後見人は介護サービス利用、財産管理、遺産分割協議、悪徳商法契約の被害防止等の権利を擁護する。
◆悪徳商法契約からの保護
 後見人がついていることの証明書:登記事項証明書によって、契約の相手(業者)がその事実を知らなくとも本人を保護できる。なお本人は印鑑証明をとる権利がなくなることで、高額商品の買物が自ずと制約される。
◆法定後見と任意後見
 任意には同意権・取消権がない。また代理権として行使できる範囲も契約時に決めた範囲のみとなる。
◆後見制度が必要となる場面
・銀行から引出し(少額を除く)
・登記所・裁判所等の手続き
・相続手続き(遺産分割協議)等
◆注意点
 後見人は法律行為以外を対象としない。よって弁護士等の職業人が後見人に選任されたときは、日々の見守りを期待できないが、親族が後見人ならば期待できる。
 また後見人の責任は重い。
使いこめば業務上横領罪となるし、一度後見人なったら自身の都合で辞任できない。

 最後に、親族のために自身が後見人になるためにはと考えて学習するだけでなく、自身に後見人をつけるため何を心掛けておくべきかを考えるといいでしょう、との説明に多くの皆さんがうなずいていました。
安江 一氏 
講座風景  成年後見制度の説明資料